荒川中部土地改良区について
○はじめに
荒川中部地域は、埼玉県の北西部に位置し、1級河川荒川水系荒川の中流部左岸と同利根川水系小山川右岸にはさまれた櫛挽大地及びその周辺に広がる農業地帯であり、深谷市、本庄市、大里郡寄居町の2市1町にまたがっている。
荒川左岸に面する地域は、荒川の古扇状地で関東ローム層に被覆された洪積台地で南縁荒川に臨む浸食崖は20から30m、この台地は緩やかな波状起伏と不規則な小起伏があり崖端は谷に刻まれているが、その先は大地の中へ浅く延び谷地が作られている。扇頂部は標高100m、扇端部は50mで傾斜は西南部から東北方に向かい約300分の1で概ね平坦な耕地である。北東端のかつて利根川に洗われた浸食崖は10から20mとなっている。
小山川右岸に面する沖積地帯は、標高が上流(西端)39m、下流37mにして2,000分の1の傾斜をなしている。
この地域は、大部分が山林であったが、開墾により農地を広げつつ、戦後、櫛挽ヶ原開拓等により食糧増産を目的とする農地開発が進められ、現在の国営事業受益対象農地は、田749ha、畑2,463haの3,212haである。この広大な農地とともに、地域内には防風林及び用排水路が碁盤の目状に配される特有の農村景観を有している。この貴重な自然遺産を将来にわたり保全・活用するよう、埼玉県「ふるさと埼玉の緑を守り育てる条例」により、深谷市・寄居町櫛挽地区が「埼玉県ふるさと緑の景観地」に指定されている。
豊饒な大地の恵みを受けるこの地域は全国でも有数の畑地帯であり、本地域の農業産出額は約400億円で、ネギ、ブロッコリー、ホウレンソウ、スイートコーン、胡瓜などの野菜類を主に、ユリ、チューリップなどの花卉類の栽培も盛んであり、大型ハウス温室による通年栽培がおこなわれ、全国でも有数の産地となっている。
○第2期国営事業
この地域では、前歴土地改良事業(昭和34年度~昭和41年度)によって、玉淀ダム花園揚水機場、幹線用水路、支線用水路等が整備され、農業用水を安定的に供給することにより干害を解消し、安定した作物生産が可能となりました。
しかし、造成後約50年経過に伴う施設の劣化により、導水幹線では、トンネル地山の空洞の発生や天井部のひび割れ、用水路区間では、コンクリートの継目やひび割れ部から漏水の発生、さらに地区の一部では取水堰の不具合等により不安定な取水を余儀なくされているなど、農業用水の安定供給に支障を来たしている。
このため本事業では、老朽化した施設の改修と併せて用水再編を行い、関連事業においても用水路の改修と畑地かんがい施設の整備を行うことにより、農業用水の安定供給を図り、併せて地区内の農業用水が従来から有している防火用水や景観・親水機能の維持増進を図る。